アウト&アウト
ハードボイルドの逸品
「ビー・バップ・ハイスクール」などの漫画や小説で知られる、きうちかずひろが自作小説を脚本化し、監督もした意欲作である。
かつて暴力団の最高幹部の側近だったが、足を洗い、今は私立探偵事務所を営んでいる矢能政男(遠藤憲一)。一緒に暮らす小学2年生の栞(白鳥玉季)に頭が上がらないが、悪党には容赦がない。ある日、一本の電話がかかってきて指示された場所へ行くと、依頼人の死体があった。戸惑う矢能は男たちに襲われ、思わぬ事件へと巻き込まれていく。
矢能と栞の間柄は手塚治虫の漫画のブラック・ジャックとピノコの関係を彷彿(ほうふつ)させる。アウトローで悪い面もあるが、揺るぎない善性を持つ主人公が実にいい。遠藤憲一が役にはまっている。脇を固める若き殺し屋役・岩井拳士朗、情報屋役・竹中直人らも好演だ。
映画は低予算でも優れたアイデア、練られた脚本と巧みな演出で勝負という往年のVシネマの精神を受け継いでいる。きうち監督の熱い思いも全編にあふれ、映画とはこれ、と言いたくなるほどだ。日本製ハードボイルド映画の逸品誕生を喜びたい。遠藤主演で続編を早くも見たくなってきた。(2019年1月31日・小野)