ぼけますから、よろしくお願いします。
高齢の両親を温かく
私(信友直子)は大学進学のために故郷を離れる。大学卒業後、映像関係の仕事に就いた私は広島県呉市に残した両親のことが気になりながらも東京での生活を続ける。
45歳の時、乳がんが見つかり、母に付き添ってもらいながら治療に取り組む。母の助力もあって人生の最大の危機を乗り越えた私は、故郷に帰るたびに両親の生活の記録を撮り始める。
最初は帰ってきた娘を温かく迎える両親が描かれるが、次第に物忘れが多くなったという母の愚痴と、困った様子の父の姿が増えてくる。
検査の結果、母はアルツハイマー型認知症と診断される。物忘れが進んでいることが分かり、苦しみ、いらだつ母。耳が遠く、家事の経験があまりない父は母を支えていこうとする。高齢夫婦のいろいろな問題を抱えた生活が丁寧に描かれていく。
監督・撮影・語りを一人娘である信友直子が担当。自分を育ててくれた両親への感謝と、認知症の母と耳が遠い父の生活への思いやりが温かく描かれている。文句の言い合いもあるが、長年寄り添ってきた夫婦ならではのお互いの気持ちも自然に描かれる。
高齢化社会の中、夫婦や親子関係について考えさせられる作品だ。(2019年2月14日・金川)