ファースト・マン
初めて月に着陸した男
「ラ・ラ・ランド」の監督デイミアン・チャゼルと主演のライアン・ゴズリングが再びコンビを組み、人類初の月面着陸に成功したニール・アームストロングの半生を描いた意欲作。
米空軍テストパイロットのニールは幼い娘を病で亡くす。悲しみを押し殺すように航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士に応募する。宇宙開発競争でソ連(現ロシア)としのぎを削り、ロケットで月着陸を目指すが、そこには幾多の困難が待ち受けていた。
企画自体は「ラ・ラ・ランド」以前からあった作品らしいが、ミュージカルの次に宇宙ものとチャゼル監督の作風の幅の広さを感じさせる。月着陸を成し遂げても星条旗を月面に揚げるシーンはなく、凱旋(がいせん)パレードもない。全体的に感情的高揚を抑えた演出がなされている。
「セッション」はドラマーの青年がジャズの楽しかるべき「キャラバン」の曲で鬼教官にしごきをうける作品だった。「ラ・ラ・ランド」ではゴズリングが「ジャズはリラックスするものじゃない」と話すシーンがあった。この映画の主人公が苦行僧の様相を呈する点で共通している。チャゼル監督のぶれのなさ、生一本さに感服する秀作である。(2019年2月21日・小野)