ミッドサマー ディレクターズ・カット版
白夜の楽園での悪夢
妹が両親と無理心中し、家族を一度に失ったダニー(フローレンス・ピュー)。心に傷を負った彼女は大学で民俗学を研究する恋人や友人たちと、スウェーデンの奥地の村で催される90年に一度の夏至祭を訪れる。花が咲き乱れ、人々が陽気に歌い踊る楽園のような村だったが、不穏な気配が漂い始める。それが悪夢のような体験の始まりだった。
「ヘレディタリー/継承」が話題となったアリ・アスター監督第2作のディレクターズカット版。オリジナルの147分に対し、170分と長い。「川の儀式」のほか細かい追加があり、イングマール・ベルイマンの「夏の夜は三たび微笑む」のような白夜の明るい世界が一転、まがまがしい地獄絵図と化す効果を高めている。オリジナルと見比べて、「ベニスに死す」の美少年ビョルン・アンドレセンが老いた姿でどこに出てくるか再確認するのも一興だ。(2020年6月4日・小野公宇一)