MOTHER マザー
都会で孤立する母子
秋子(長澤まさみ)は幼い息子周平(郡司翔)を持つシングルマザー。働かず、親戚から借金しては浪費している。金の無心は周平の役目で、秋子が気まぐれに向ける優しさだけを心の糧に金を集め歩いていた。17歳になった周平(奥平大兼)はフリースクールで母以外の大人や同年代の若者と出会い、学ぶ喜びを知る。だが、金をせびる母に逆らえず、最悪の事件を起こす。
2014年の川口市祖父母殺害事件を原案に「日日是好日」の大森立嗣が監督。脚本に延岡市出身の港岳彦が参加している。都会の真ん中で暗い目をした母子が立ちつくす。彼らを気に留める人はいない。母子の孤独に戦慄する場面だ。人気の長澤まさみが出演したことで少しでも母子のような境遇に社会の関心が向かうことを祈る。誰かが気付かなければ大人の陰で苦しむ少年少女のことなど誰も知らない。(2020年7月9日・手塚)