家族を想うとき

過酷な労働　壊れる絆

英国の地方都市で暮らす４人家族。父親はフランチャイズの宅配ドライバーを始める。１日１４時間の週６日という過酷なもの。しかも個人事業主とは名ばかりで、少しでもルールから外れると厳しい制裁金が科される。母親はパートタイムの訪問介護士。利用者への温かい心を失うことなく朝から夜まで働くが、夫が事業の元手で車を売ってしまったためバスでの移動が大きな負担になった。高校生の息子は反抗期でスプレーでの落書きやけんか、万引と次々に問題を起こす。小学生の娘は壊れかけた家族が元通りになるようにあることを企てる。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」でカンヌ国際映画祭最高賞に輝いたケン・ローチが引退を撤回して監督した。見ているうちに、この家族が身近な人々に思えてくる。１時間４０分の短い映画ながら、問い掛けてくるものは本当に多い。（2020年01月23日・後藤）