はちどり

思春期の揺れる思い

1994年、経済成長期のソウルの集合団地で暮らす中学2年生のウニ（パク・ジフ）。両親は小さな餅屋を営み、姉は高校受験に失敗、父親は長男に期待を寄せる。うっ屈した長男からウニは暴力を振るわれ、家庭にも学校にもなじめないでいた。ある日、通っていた塾に女性教師のヨンジ（キム・セビョク）がやってくる。ウニは話を聞いてくれるヨンジに心を開いていく。

体型は小型で羽を1秒に80回羽ばたかせ、蜜を求めて飛び続けるハチドリに主人公を重ね、思春期の揺れる思いをヴィヴィッドに描き出している。崩落したソンス大橋をながめる終盤の場面も印象的。家族や友達との心の懸け橋が失われているのを象徴しているよう。監督は本作が初長編作品となるキム・ボラ。自身の体験をもとに、少女の視点を通して経済格差やジェンダーなどさまざまな社会問題を浮き彫りにしている。（2020年9月10日・小野）