パブリック　図書館の奇跡

ホームレスと行動共に

俳優エミリオ・エステベスが製作・監督・脚本・主演と4役をこなし、実際の新聞記事から着想を得た話題作。

米シンシナティに大寒波が訪れる。市のシェルターはいっぱいで、行き場のないホームレスたちが寒さしのぎに公共図書館へやってくる。事情を察した館員のスチュアート（E・エステベス）は館内を占拠したホームレスたちと行動を共にする。思わぬ大騒動になり、機動隊も出動する事態となる。スチュアートは隊の突入を防げるのか。

終盤に主人公がホームレスたちと取った行動は笑うに笑えず、賛否両論あるだろう。だが弱者や貧者の実情や民衆の権利、司法やマスコミの在り方などの問題を時にユーモアを忘れず一作に注ぎ込み、見飽きさせない手腕はさすがだ。スタインベックの「怒りの葡萄」の一節を借りた一幕も心にしみる。エステベスの今後の関与作に期待したい。（2020年9月17日・小野）