It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

海辺の映画館 キネマの玉手箱

にぎやかに「反戦」訴え

広島・尾道の海岸沿いにある映画館が閉館の日を迎え、「日本の戦争映画大特集」が上映される。映画を見ていた3人の若者は中学生の少女を守るためスクリーンの世界の中に入り、戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦、原爆投下前夜の広島を体験することになる。

「時をかける少女」などの大林宣彦監督の遺作。切り抜いた写真のパッチワークのようにポップでカラフルな画面構成や無声映画からミュージカルまでさまざまなパートが混在する作風は頂点を極め、おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかさ。このタッチで「反戦」をテーマに戦争の犠牲となる人々の悲劇を描いていく大異色作だ。黒澤明監督の「映画の力で世界から戦争をなくしたい」という遺志を受け継ぎ、戦争を体験した最後の世代として「映画で僕らの未来を変えていこう。この思いを次の世代に託す」というメッセージが強く伝わる。(2020年9月24日・後藤)

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