アルプススタンドのはしの方
高校演劇の傑作映画化
全国高校演劇大会で最優秀戯曲賞を受賞した作品の映画化。城定秀夫監督作である。
夏の高校野球甲子園大会の1回戦。はつらつとプレーしている選手たちを観客席のはしっこで見つめる4人がいた。演劇部員の安田(小野莉奈)と田宮(西本まりん)、元野球部の藤野(平井亜門)、優等生の宮下(中村守里)。皆、心にうっ屈を抱えていた。試合が白熱し、4人の思いが交錯するうち、応援も熱を帯びていく。
野球のグラウンドは出てこず、観客席だけで進行する着想が出色だ。話に上るだけで出て来ない吹奏楽部の女子がいる一方、映画独自の人物で熱血教師の厚木(目次立樹)がユニーク。「しょうがない」を口癖のように連発し、観戦しているうちに、選手たちのプレーから、生徒たちが前向きな気持ちになっていくのがいい。生きる上でのエールを送ってくれる今年屈指の秀作だ。(2020年10月15日・小野)