ばるぼら
手塚治虫原作の異色作
創作に行き詰まった作家の美倉洋介は新宿駅の片隅で酔いつぶれていたばるぼらという名の少女と遭遇する。洋介はホームレスのような彼女を自宅に連れて帰る。常に酒を飲んでだらしないばるぼらに閉口しながらも洋介は彼女に引かれていく。彼女と一緒にいることで洋介の創作意欲もわき、筆が進んでいくが。
1973年から「ビッグコミック」で連載された手塚治虫の異色作を映画化。監督は手塚治虫の息子で「白痴」「ブラックキス」の手塚眞。主演は稲垣吾郎と「翔んで埼玉」などの二階堂ふみで、「一度も撃ってません」などの渋川清彦、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」などの石橋静河らが共演。世界的に有名なクリストファー・ドイルを撮影監督に起用し、洋介がのめり込んでいく幻想的で退廃的な世界をうまく表現している。異色作だが、作り手の個性を十分に味わうことができる。(2020年11月26日・酒井)