ホテルローヤル

原作を見事に再構築

桜木紫乃の直木賞受賞作の映画化。「百円の恋」の武正晴監督作品である。

北海道釧路の廃屋。そこはかつてのラブホテル「ホテルローヤル」だった。往時、美大受験に失敗した雅代（波瑠）は経営者の父（安田顕）を手伝い、アダルトグッズ販売の宮川（松山ケンイチ）に恋心を寄せていた。従業員のミコ（余貴美子）は息子が殺人事件で逮捕されたショックで失踪、雅代の母（夏川結衣）は酒屋の配達員と駆け落ちする。ホテルには訳ありの高校教師（岡山天音）と女子高生（伊藤沙莉）などの客が安息を求めて来ていた。ある日、建物内で心中事件が起きる。

連作集の原作を実家がラブホテルを営んでいた原作者の投影と言える雅代の視点から再構築し、男女の性愛を見つめる。一人の女性が自分の道を切り開いていくドラマとしても見事な、人間がいとおしくなる一作だ。（2020年12月17日・小野）