騙し絵の牙
都会的センスの快作
大泉洋にあて書きされた塩田武士の同名小説を大泉主演で映画化。「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八が監督し、脚本も楠野一郎と務めた。
出版社「薫風社」は社長が急死し、次期社長を巡って権力争いが起こる。速水編集長(大泉洋)のカルチャー誌「トリニティ」は専務の東松(佐藤浩市)が進める改革で、廃刊の危機に。速水は新人編集者の高野(松岡茉優)とともに大胆な企画を仕掛けるが、事件が起こり、いっそうの苦境に追い込まれる。
過去7作の吉田監督作品同様、原作を大幅に改変しているが、映画的にこなれて別の味わいがある。先の読めない展開にコンゲーム的面白さも。きめの細かい演出で既製品でない大泉洋が見られる。日本社会のさまざまな問題点があぶり出されるのも見事。スピーディーで都会的なセンスにあふれた快作だ。(2021年4月1日・小野)