あの頃。
アイドルおたくの青春
バンド活動はうまくいかず、金もなく、ガールフレンドもいない劔(松坂桃李)。友人から借りたDVDで松浦亜弥が歌い踊る姿を見て、ハロー!プロジェクトのアイドルたちにはまっていく。プライドが高くてひねくれ者のコズミン(仲野太賀)らハロプロを愛してやまない仲間と知り合い、くだらなくもいとおしい青春の日々を過ごす。
劔樹人のコミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」の映画化。「愛がなんだ」の今泉力哉が監督し、「南瓜とマヨネーズ」の冨永昌敬が脚本を手がけた。後半、やや難病ものめくが、ウェットさはなく、アイドルおたくの青春群像劇として出色の出来栄え。主人公は数年後「今が一番楽しい」と独白するが、仲間たちと過ごした「あの頃」が糧となり、現在に続いているからだろう。見る者に多幸感を与え、映画を見ている時間が「一番楽しい」と思わせてくれる好編だ。(2021年4月15日・小野)