旅立つ息子へ
胸を打つ父と子の交流
アハロン(シャイ・アヴィヴィ)は愛する息子のウリ(ノアム・インベル)のためにすべてを尽くし、田舎町で2人暮らしをしてきた。別居中の妻は自閉症スペクトラムの息子を心配し、支援施設への入所を決める。定収入のないアハロンは裁判で養育不適合と裁定され、従わざるを得なかった。入所の日、ウリは父との別れにパニックを起こす。アハロンは息子を守るため2人で逃避行を始める。
「ブロークン・ウイング」「僕の心の奥の文法」で東京国際映画祭グランプリを2度受賞したイスラエルのニル・ベルグマン監督作。父と子の心の交流がいい。プールで多くの女性を目にして下半身をほてらせた息子を父親が静かに水中に沈めてやるシーンが印象的だ。ウリはチャップリンが好きで「キッド」にオマージュをささげられているよう。終盤の展開が胸を打つ。94分の上映時間も見やすい秀作。(2021年5月13日・小野)