水を抱く女
神話に基づく愛の物語
ベルリンの博物館で歴史研究家として展示品の解説をするウンディーネ(パウラ・ベーア)。恋人から別れ話を切り出され、悲しみにくれていた。そんな折、カフェで潜水作業員のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)と出会い、激しい恋に落ちる。だが彼女の恋人が復縁を望んで再び接近してきた頃から、クリストフの心情に変化が訪れる。潜水中に事故も起き、脳死状態となってしまう。
原題「ウンディーネ」は主人公の名前で、ギリシャ神話の「水の精」の物語に基づくラブストーリー。ベルリン市街の模型や壊れるカフェの水槽など細部に不思議な魅力がある。「沼地」だったベルリンで2人が恋に落ち、水中シーンが何度か出てくるうちに、見る者を幽明の境へ連れて行くよう。「未来を乗り換えた男」のクリスティアン・ペッツォルト監督が幻想的で蠱惑的な愛の名作に仕上げた。(2021年6月10日・小野)