ファーザー
ホプキンス 見事な演技
ロンドンで一人暮らしをする81歳のアンソニーは、ある日、介護人とトラブルを起こす。娘のアンが駆けつけると、アンソニーには認知症の傾向が見え始めていた。認知症は日に日に悪化しているようだった。アンソニーはアンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受ける。さらにアンと結婚して10年になるという男が突然現れ、彼はますます混乱する。
アンソニー・ホプキンスがアカデミー主演男優賞を受賞した作品。娘役は「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマン、監督は基になった舞台を手掛け、映画監督デビューとなるフロリアン・ゼレール。認知症の父親の視点で映画は進行し、最初は何がなんだか分からないが、やがてこれが認知症だと観客は気づく。自分自身や家族のことも分からなくなり、記憶や時間が混乱していく主人公を演じるホプキンスの演技が実に見事だ。(2021年6月24日・酒井)