Arc アーク
不老不死の女性の「時」
舞台は近未来。化粧品会社エターニティ社に勤めるリナ(芳根京子)は遺体保存処理プラスティネーションを行っている。遺体を美しくポージングする技術者のエマ(寺島しのぶ)はリナに才能を見いだし、事業を託す。エターニティ社はそれをさらに発展させ不老不死を実現。永遠の若さと命を得た人類だが、その技術を巡って隔たりが生まれる。中国系アメリカ人作家ケン・リュウのSF小説を「愚行録」の石川慶監督が映画化。生と死という哲学的テーマを不老不死となった女性が過ごす「時」を通して描いた。
宇宙は永遠ともいえる壮大な時空。その中で私たち生物は振り子が描く円弧のように始まりと終わりを繰り返す。生き、老い、病み、そして死ぬ苦しみに抗いながら。主人公は100年以上を経て、ようやく人生を終える。その終焉は「時」から自由になるすがすがしさに満ちて美しい。(2021年7月15日・手塚)