岬のマヨイガ
民間伝承下敷きのアニメ
家出少女のユイ(芦田愛菜)は東日本大震災で被害を受けた狐崎の神社で、両親を交通事故で失ったショックで声が出なくなった少女ひより(栗野咲莉)と出会う。身寄りのない2人は避難所で出会った老女キワ(大竹しのぶ)に引き取られ、岬にある古民家で共同生活を始める。そこは迷い込んだ人間をもてなし幸福にする「マヨイガ」(迷い家)だった。キワは家に河童たちを呼び、海中のほこらを調べてもらう。間もなく周辺に異変が起き始める。
柏葉幸子の同名小説のアニメ化。マヨイガでの食事のシーンがおいしそう。心に傷を負った少女たちがこの家で癒されるのがいい。「ふしぎっと」と呼ばれる河童や妖怪たちとの交流にはほっこり。少女たちが異変に立ち向かい、自分の心を再起させていく姿が印象深い。「遠野物語」の民間伝承を下敷きにした心温まる秀作だ。監督は川面真也。(2021年9月9日・小野)