83歳のやさしいスパイ

老人ホームで潜入捜査

80歳から90歳の高齢男性の求人に採用された83歳のセルヒオの任務はある老人ホームの内偵。「親が虐待されている」と疑う依頼主のため、ホームでの様子を毎日報告するというものだった。彼は不慣れな携帯電話、眼鏡型の隠しカメラを駆使し、老人ホームで潜入捜査を行う。やがて悩みを抱えた入居者たちの良き相談相手となっていく。

珍しいチリ（アメリカ、ドイツ、オランダ、スペインの合作）の作品。舞台となった老人ホームの許可を得てスパイと明かさずに3カ月間撮影された。第17回ラテンビート映画祭や第33回東京国際映画祭では「老人スパイ」のタイトルで上映され、第93回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞候補となった。監督は主にドキュメンタリーを手掛けてきたマイテ・アルベルディ。老人たちの孤独な現実を描いているが、それを優しく包み込む包容力も備わっている。（2021年9月30日・酒井）