護られなかった者たちへ

生活保護絡む連続殺人

東日本大震災で妻と子を失った刑事の笘篠（阿部寛）。10年後、宮城県の仙台で全身を縛られたまま餓死させられる凄惨な連続殺人事件が起きる。笘篠は2つの事件に共通点があることに気づく。放火事件で服役後、出所したばかりの利根（佐藤健）が容疑者として浮上、足取りを追う。

中山七里の同名ベストセラー小説の映画化。身寄りのない老婆（倍賞美津子）と少女と3人暮らしをしていた利根の擬似家族を中心に、大震災後も今なお人々を襲う痛みとともに、生活保護の制度に迫る。コロナ禍の現在、深刻さを増す格差と分断の問題を再考させられる。佐藤健と阿部寛が好演だが、福祉保険事務所で働く幹子役の清原果耶の演技が凄い。表現力では今の若手女優では随一だろう。監督は「菊とギロチン」の瀬々敬久。最近高打率であぶらが乗っている。（2021年10月7日・小野）