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シネマ1987online

草の響き

出口探しもがく主人公

東京で出版社に勤めていた和雄は心を病み、妻の純子とともに故郷の函館に帰る。自律神経失調症と診断された彼は運動療法として医師からランニングを勧められ、毎日、決まったコースを走って記録をつけていく。走ること以外何もできない夫を純子は献身的に支えるが、慣れない土地で暮らすことに不安を募らせていく。そんな中、和雄は3人組の若者たちと知り合う。

函館出身で「そこのみにて光輝く」「海炭市叙景」などの作家・佐藤泰志の小説を、「空の瞳とカタツムリ」などの斎藤久志が監督。主演は「菊とギロチン」「寝ても覚めても」の東出昌大で「先生、私の隣に座っていただけませんか?」の奈緒、「明日の食卓」の大東駿介が共演。函館の街の独特の湿り感が作品の持ち味で、真っ暗なトンネルの中で、一人出口を探してもがいている主人公の姿に人生のはかなさを感じさせる。(2021年11月18日・酒井)

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