ラストナイト・イン・ソーホー

酔い心地満点の傑作

ファッションデザイナーになるのが夢のエロイーズ（トーマシン・マッケンジー）。ロンドンのデザイン学校に入学し、一人暮らしを始めるが、眠りにつくと60年代のソーホーにいた。そこで歌手志望のサンディ（アニャ・テイラー=ジョイ）を見て、体も感覚も彼女と同調していく。不思議な体験を繰り返すエロイーズはある日、夢の中でサンディが殺される現場を目撃する。サンディを殺した犯人が今も生きている可能性に気づいた彼女は亡霊につきまとわれながらも事件の真相を探る。

「007　サンダーボール作戦」の看板がある映画館など60年代の英国を再現した美術が素晴らしい。ファッションも魅力的で音楽の使い方のうまさは「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督ならでは。好センスでつくられた現代のゴシックホラーでミステリー。蠱惑（こわく）的で酔い心地満点の傑作だ。（2021年12月23日・小野）