ヤクザと家族 The Family
更生難しい社会に一石
「新聞記者」で日本アカデミー賞最優秀作品賞など6冠に輝いた藤井道人監督の新作。
父母を亡くした山本(綾野剛)は自暴自棄になり、暴力団を挑発、絶体絶命の危機に陥るが、柴咲組組長の柴咲(舘ひろし)に救われる。山本は柴咲と親子の契りを結び、のし上がっていく。しかし敵対暴力団の団員殺しで14年服役、出所後の世界は様変わりしていた。山本は組を抜け、元ホステスの由香(尾野真千子)と家庭を築こうとするが、過酷な現実が待ち受ける。
1999年、2005年、19年と20年間におよぶドラマ。序盤、主人公が海辺の道路をバイクで走る長回しのシーンから引き込まれる。暴対法で生きづらくなったヤクザと、孤独な青年の「家族」を探る姿が胸に迫る。ラストシーンも忘れ難い。一度道を踏み外すと更生するのが難しい社会のありように一石を投じ、再生への祈りを込めた力作だ。(2021年2月18日・小野)