余命10年

難病ものを超える繊細さ

数万人に１人という不治の病を抱える20歳の茉莉（小松菜奈）。余命が10年であることを知り、生きることに執着しないよう恋はしないと決めていた。だが、同窓会に出席し、かつて同窓生だった和人（坂口健太郎）と再会する。2人は急接近し、もう会ってはいけないと思いつつ、茉莉は和人と逢瀬を重ねていく。

ヒロインと同じ難病で亡くなった小坂流加の原作小説の映画化。茉莉がたびたびビデオカメラを回している姿が印象深い。目に飛び込んだ「生」を愛おしみすくい取ろうとしているよう。衝動的に自殺しかけた和人に茉莉が「ずるい」というところも胸を打つ。生きたくても生きられない者もいるのに勝手に死ぬのは罪と思わされる。監督は「新聞記者」の藤井道人。繊細な演出で難病ものの枠を超えて、心にしみ入るラブストーリーに仕上げた。（2022年3月10日・小野）