パワー・オブ・ザ・ドッグ
男性優位に厳しい目
1925年、米国モンタナ州。フィル(ベネディクト・カンバーバッチ)と弟のジョージ(ジェシー・プレモンズ)のバーバンク兄弟は牧場を共同経営し成功していた。だがジョージが未亡人のローズ(キルスティン・ダンスト)と結婚し迎え入れたため、兄弟の関係に亀裂が生じる。フィルはローズに嫌がらせを繰り返し、ローズは心労からアルコールへの依存度を強めていく。フィルはローズの息子ピーター(コディ・スミット=マクフィー)に秘密を知られ、態度を変えていく。
トーマス・サヴェージの同名小説の映画化。タイトルの「犬の力」は旧約聖書に基づくが、ピーターの「魂の解放」を言っているのか。同性愛が閉じ込められている作品に思えるが、すべては明示されず、かえって心に残る。男性優位社会に厳しい目を向けた秀作。監督のジェーン・カンピオンはアカデミー監督賞を受賞した。(2022年3月31日・小野)