流浪の月
孤独な2人 15年後再会
2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうのベストセラー小説の映画化。
家に帰りたくない少女・更紗(白鳥玉季)。大学生・文(松坂桃李)は雨の公園で傘を差しかけ、家に連れて行き、一緒に過ごす。それがもとで文は誘拐犯、更紗は被害者と目されてしまう。15年後、更紗(広瀬すず)は恋人の亮(横浜流星)と静かな生活を送っていた。ある日、更紗はパート仲間とカフェに行き、店のマスターの文と再会する。
「悪人」の李相日監督作。脚本も手掛け、時制を交錯させた構成だが、混乱はない。言えない事情を抱えた孤独な2人の姿が出演者の好演とホン・ギョンピョの見事な撮影、種田陽平らの美術も相まって繊細に、品格ある映像で綴られる。2人が握った手を離そうとしないシーンも印象的だ。孤独に苦悩する人々全てが誰かと繋がれ、月の光が届くよう祈らずにはいられない。(2022年5月26日・小野)