オフィサー・アンド・スパイ
重厚な構成 緊迫の展開
19世紀末のフランス、ユダヤ人将校のドレフュスがスパイ容疑で逮捕され、軍籍を剝奪される。陸軍大学校の校庭でサーベルを折られる屈辱を受け、絶海の孤島に流刑される。事件後、軍の情報局長に着任したピカールは捜査資料を見直す中で、ドレフュスの無実を示す証拠を発見。真犯人を突き止め、軍の上層部に報告するが、上層部はそれをもみ消そうとし、証拠の捏造(ねつぞう)や文書の改ざんなどあらゆる手で隠蔽(いんぺい)しようとする。背景にはユダヤ人に対する根強い差別と偏見があった。
このドレフュス事件がきっかけでシオニズム運動が起こり、イスラエル建国へつながっていく。ユダヤ系の巨匠ロマン・ポランスキー監督の重厚な画面構成と緊迫感ある展開によってその時代に生きた歴史の証人になったかのような臨場感を与える傑作となった。現代の日本にも通じる内容だ。(2022年7月7日・後藤)