戦争と女の顔
戦後も続く女性の悲劇
第二次世界大戦の後半、ソ連第2の都市レニングラードはドイツ軍から900日近く包囲された。男たちが次々と戦死し、捕虜になる中、多くの若い女性が戦闘に参加した。イーヤは戦闘でダメージを受けて前線を離れ、心的後遺症による発作に苦しみながら看護師として働く。親友マーシャの息子を預かったが、突然の発作でその子を圧死させてしまう。前線から帰り、子どもの死を知らされたマーシャはイーヤに頼む。「心の支えに子どもがほしい。あなたが産んで」。マーシャは戦闘で子宮を失っていた。
ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」を原案にしたロシアの若い監督の作品。戦後も続く女性たちの悲劇をフェルメールの絵画を思わせる美しい画面で描いた。戦争が魂の奥深くを傷つけることを改めて認識させられる。(2022年9月8日・後藤)