マイ・ブロークン・マリコ
親友の遺骨奪い疾走
シイノの親友、マリコが自殺した。幼い頃から父親や周りの男たちから虐待されてきたマリコが唯一、心を許せた存在はシイノだけ。シイノはマリコを弔うため遺骨を父親から奪い、2人で行こうと約束していた海を目指す。
原作は2019年に発表された平庫ワカの漫画で、作品にほれ込んだ「百万円と苦虫女」の監督、タナダユキが映画化した。主演の永野芽郁はマリコを一途に思う主人公のシイノそのもの。奈緒が繊細に演じているマリコの切ない人生を強く大らかに包み込む。
大切な存在を突然失った喪失感は例えようがなく、シイノも遺骨を抱えて疾走し、思い出に浸って途方に暮れ、悼んで泣き叫ぶ。死者をどんなに責めても応えてはくれないが、それでいいのだと思う。伝えたかった言葉、見せたかった景色が日常に増えるばかりでも、思う誰かは一緒にそこに生きているから。(2022年10月13日・手塚)