よだかの片想い
真っすぐ生きるヒロイン
顔の左側にアザがあり、幼い頃、からかわれたアイコ(松井玲奈)は生きることに消極的になっていた。顔にアザやけがのある人を題材とした本の取材を受け、それが映画化されることになり、監督の飛坂(中島歩)と出会う。映画化を断っていたアイコだったが、飛坂に引かれていく。飛坂の元恋人の存在や、飛坂が映画化のために自分に近づいた疑念も頭をもたげ始める。
直木賞作家・島本理生の原作を「愛なのに」の城定秀夫の脚本により安川有果監督で映画化。「Dressing up」の安川監督は異形の者に興味があるのか。アザのあるヒロインが魅力的で、劣等感を抱えながらもまっすぐに生きる姿に打たれる。飛坂をアザのある左側に座らせるところもいい。
アイコが飛坂の元恋人と海辺を歩く口パクのずれた場面やラストシーンも忘れ難い。センスある演出で見る者を前向きな気持ちにさせる秀作だ。(2022年12月1日・小野)