ベネデッタ
聖と俗一体の主人公
「氷の微笑」のポール・ヴァーホーベン監督の新作。実在した修道女の物語である。
17世紀、イタリアのペジラ。幼い頃から奇跡を起こすと思われていた修道女ベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)はある日、修道院に逃亡してきた若い女性を助ける。2人は秘密の関係を深めるが、ベネデッタは修道院長シスター・フェリシタ(シャーロット・ランプリング)を追い落とし、新修道院長に任命される。周囲にさまざまな波紋が広がっていく。
「きれいは汚い、汚いはきれい」というシェークスピアの「マクベス」の言葉のように、「聖」と「俗」が一体となった主人公に引きつけられる。ヒロインの体に現れる「聖痕」は真実か嘘なのか。その二重性は過去作にも通底し、エロティックでもあり、ヴァーホーベン節発揮だ。17世紀の時代色を再現した美術も見事。掛け値なしの傑作だ。(2022年3月30日・小野)