イニシェリン島の精霊
親友2人 突然の絶交
「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督の新作で、ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門の作品賞を受賞した。
1923年、アイルランド西岸沖のイニシェリン島。内戦中の本土と違い、平和な島に住むパードリック(コリン・ファレル)は親友のコルム(ブレンダン・グリーソン)から突然絶交される。困惑したパードリックは思慮深い妹のシボーン(ケリー・コンドン)や隣人ドミニク(バリー・コーガン)らの力を借りて関係を修復しようとするが、コルムはかたくなに拒絶。2人の対立は危険な事態を迎える。
主人公の親友はなぜ絶交したのか、その興味で引きつけられる。2人の対立はアイルランド内戦だけでなく、ロシアによるウクライナ侵攻まで、あらゆる戦いの縮図を思わせる。人の心の闇の深さものぞかせ、「精霊」のタイトル通り寓意ある奥の深い秀作だ。(2022年2月2日・小野)