エンパイア・オブ・ライト
映画館への愛あふれる
1981年頃のイギリス、海辺の映画館エンパイア劇場。チケット売り場で働く中年女性ヒラリーは精神的な不安定さを抱えていた。そこに黒人青年スティーヴンが働き始め、彼女の毎日が活気づく。映画館の閉鎖された上層階で傷ついた鳩を治療して2人は急速に仲良くなるが、彼女にも彼にも背負っている重いものがあった。
映画館の暗闇に身を置き、光を見つめることで日常の辛さを癒やし、明日を生きる勇気を得ていた若き日のサム・メンデス監督の自伝的要素が強い。登場する支配人は嫌なやつだが、映写技師のおじさん、同僚たちは温かい。ヒラリー役のオリヴィア・コールマンが本当に上手で、スティーヴン役の新星マイケル・ウォードも輝いている。決して甘美なノスタルジーだけではなく、人種差別なども盛り込んだビターなテイストだが、映画愛と映画館愛にあふれている。(2022年3月2日・後藤)