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シネマ1987online

猟奇的な彼女

「猟奇的な彼女」パンフレット

「努力した人には運命が偶然という橋を架けてくれる」。こんなメッセージが最後に2度繰り返されるのは韓国映画らしいところか。2001年に観客500万人を動員したラブストーリー。というよりはハッピーで軽いラブコメで、クスクス笑いながら見た。気のいい男が男まさりの女に振り回されるという設定は弓月光やあだち充など日本のラブコメ漫画の影響があるのではないか、と思いたくなる(キム・ホシクの原作はインターネットで発表された手記という)。ボケとツッコミのどつき漫才のような男女関係なのである。韓国の若者の風俗は日本とほとんど変わらず、その意味でも受け入れられやすい作品だろう。脚本や演出は手の内が見えて、それほど優れたものではないと思うが、主演2人の魅力(特に溌剌とした チョン・ジヒョン=若い頃の工藤夕貴に似ている)が映画を元気のよいものにしている。この2人が観客と等身大の存在であることもヒットの大きな理由と思う。

大学生のキョヌ(チャ・テヒョン)はある晩、地下鉄の駅で酔っぱらって線路に落ちそうになった美女を助ける。酔っぱらっていなければ、好みのタイプだったが、電車に乗せると、その美女は座っている男にゲロを吐きかけてしまう。女がキョヌに向かって「ダーリン」と言ったために、キョヌは介抱するために女をおぶってホテルに連れて行く羽目になる。ゲロと汗を落とそうと、シャワーを浴びたところで警官が突入、キョヌは留置場に入れられる。という最低のシチュエーションのボーイ・ミーツ・ガールで2人は知り合い、おかしな交流を続けていく。

映画は前半戦、後半戦、延長戦の3部構成。延長戦での別れの一本杉みたいな描写にはウーンと思ってしまう(単なるすれ違いのメロドラマ的シチュエーションで新鮮みは何もない)のだが、脚本化にあたって付け加えたこの部分を気に入る人も多いのだろう。大衆的なものは強いのである。猟奇的な彼女(ついに名前は出てこなかった)の死んだ恋人への決別の思いをクライマックスに置いたことで、映画には深みが生まれた。パンフレットによると、脚本・監督のクァク・ジェヨンは89年に監督デビューし、これが8年ぶりの4作目。偶然を積極的に肯定し、ハッピーエンドを強く希求する姿勢はエンタテインメントには欠かせないものだと思う。

【データ】2001年 韓国 2時間2分 配給:アミューズピクチャーズ
監督:クァク・ジェヨン プロデューザー:パク・クォンソプ シン・チョル アソシエイト・プロデューサー:チェ・スヨン ソ・ユンヒ 原作:キム・ホシク 脚本:クァク・ジェヨン 音楽:キム・ヒョンソク 撮影:キム・ソンボク 美術:ソン・ユンヒ
出演:チョン・ジヒョン チャ・テヒョン キム・インムン ソン・オクスク ヤン・グムソク ハン・ジンヒ ヒョン・スキ キム・イル イム・ホ

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