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シネマ1987online

ロボコップ2

アーヴィン・カーシュナーの映画は「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」も「ネバーセイ・ネバーアゲイン」も好きである。なかなかダイナミックな演出をする監督なのだ。小粒な「アイズ」だって嫌いではない。だからこの「ロボコップ」の続編もそれ相応の期待を持って見たのだが、ポール・バーホーベンの傑作の後ではいかにも分が悪かった。見どころはいくつかあるが、何というか、凡庸な続編になってしまった。

異例に長い予告編ではロポコップとロポコップ2との対決が主になっていて、「子供向けなのでは」と心配したが、そんなことはなかった。前作にあった残酷さにも引けを取ってはいない。ショッキングなのはロポコップが麻薬組織によってバラバラにされるくだリである。鎖で台に固定され、ハンマーをゴツン、ゴツンと打ちつけられて足を外され、腕をもぎ取られて無理やり分解されていく。ここは前作で警官マーフィーが右腕を撃ち飛ばされ、防弾チョッキの上からさんざん弾丸を浴びる場面に呼応する。思えば、カーシュナーは「帝国の逆襲」でもC-3POをバラバラにしたのだが、あの時はむしろユーモラスにさえ感じられたのに、この映画の場合はひたすら悲惨だ。同じロボットでも(というか、サイボーグなんだけど)ロポコップは人間の顔をしているだけに、苦痛の表情は見るに忍びない。こういう残酷さがアメリカでの否定的な評価につながっているのではないか。

続編の作りとしては、主人公より強い相手を出すというのは常套的である。例えば「スーパーマンII冒険編」ではスーパー3悪人を出して、メトロポリスでの対決を大きなクライマックスとした。この映画でオムニ社が新たに作るロポコップの2号機は、ロボコップより巨大で強力でまったくの機械であり、まるでターミネーターだ。全身がメタリックなので、その動きは、ほとんどアニメーションによって処理されている。この2号機の材料にされるのが、麻薬組織のボスであるケイン(トム・ヌーナン)。精神的に強い者でなければ、ロポコップとしての負担に耐えられない−というのがその理由なのだが、無茶苦茶である。人間であった時の記憶が残るのはマーフィーの例で分かっているのだから2号機が暴走するのは当然予期できたはずだ。しかし、開発に当たった美人の心理学者ファックス(ベリンダ・バウアー)にはその認識がなかった。ファックスは昇進するためにはどんなことでもする女で、悪役としては魅力的である。

2号機が後半になってからしか登場しないのはちょっと惜しい。前半は新麻薬ヌーク扱う組織とロポコップの対決やデトロイト市の乗っ取りを図るオムニ社、マーフィーのしんみりした描写(あっさりしているけれどもね)などに費やされる。別に悪くはないのだが、いろいろと盛り込み過ぎたことで前作にあった人間味のある描写の余裕がなくなってしまった。前作でのバーホーベンのタッチは重々しく、映画に厚みを与えていたが、カーシュナーは無難にまとめてはいるものの、深みには欠けるようだ。サイバーパンクとも形容されたデトロイトの雰囲気、ブラックなテレビCMも今回は少し違和感があった。前作と同じようで、どこか違うのである。監督の資質の違いがそのまま画面に表れているわけだ。

前作で瀕死の重傷を負ったルイス(ナンシー・アレン)は見せ場が少なく、ロボコップ役のピーター・ウェラーも素顔の場面があまリなかった。パート3を作るのなら、そのあたりも考慮してほしいところだ。(1990年8月号)

【データ】1990年 アメリカ 1時間56分
監督:アービン・カーシュナー 製作総指揮:パトリック・クロウリー 製作:ジョン・デイビソン 原作・脚本:フランク・ミラー 脚本:ウォロン・グリー 撮影:マーク・アーウィン 音楽:レナード・ローゼンマン
出演:ピーター・ウェラー ナンシー・アレン ダン・オハーリー トム・ヌーナン ベリンダ・バウアー

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