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ストーリー・オブ・ラブ

「ストーリー・オブ・ラブ」

結婚15年目、離婚の危機にある夫婦を描いているが、ほとんど退屈。ロブ・ライナー監督の才能を疑いたくなるような失敗作である。失敗の原因は、はっきりしていて、脚本がいい加減なのである。離婚の危機を乗り越えるのに、ラストのミシェル・ファイファーの長いセリフだけで説得するには無理がある(ファイファーの演技はいい)。夫婦間の亀裂が何ら修復されないまま、元のさやに収まるのでは何の解決にもならない。こんな素人が書いたような脚本を映画にしてはいけない。ロブ・ライナーは出演もしているが、演技する暇があったのなら、アラン・ツウァイベルとジェシー・ネルソンの脚本にもっと手を入れるべきだった。エリック・クラプトンのロマンティックな音楽だけが光っていた。

登場人物が画面に向かって語りかけるなど、「恋人たちの予感」のような作りである。ベン(ブルース・ウィリス)とケイティ(ミシェル・ファイファー)は長年の夫婦生活で感情の食い違いが目立つようになっていた。2人の子どもの前では仲の良い夫婦を演じているが、ささいなことで怒鳴り合うようになり、亀裂は大きい。子どもたちがサマーキャンプに入るのを機会に別居を試みる。そこから先はストーリーと呼べるものではない。2人がそれぞれ、これまでの結婚生活を振り返るのだ。出会いから結婚、子供の誕生、日常生活、カウンセリング、関係修復をするためのベニス旅行などがスケッチ風の描写で描かれる。いつものロブ・ライナーらしく、クスクス笑える場面は多いのだが、それだけのこと。基本的には深刻な話だから、そうした場面がうまく結びついていない。ファイファーとウィリスが怒鳴る場面が多いのにも閉口してしまう。

「結婚なんてロマンスの抹殺装置よ」。ケイティの友人が話す場面があるが、その言葉通り、恋愛期間中とは違って結婚は現実。単なる夫婦の日常を描いただけでは、ロマンティックにはなりにくい。だからロマンティック・コメディが得意なロブ・ライナーの資質とはかみ合わなかったのだろう。こういうテーマなら、ウディ・アレンやイングマール・ベルイマンあたりを引き合いに出したくなる。

【データ】1999年 アメリカ 1時間36分 ワーナー・ブラザース配給
監督:ロブ・ライナー 製作・脚本:アラン・ツウァイベル ジェシー・ネルソン 撮影:マイケル・チャップマン 美術:リリー・キルバート 音楽:エリック・クラプトン マーク・シェイマン 衣装:シェイ・カンリフ
出演:ブルース・ウィリス ミシェル・ファイファー コリーン・レニソン ジェイク・サンドビグ ティム・マティソン ロブ・ライナー ジュリー・ハガティ リタ・ウィルソン ジェイン・メドウズ トム・ポーストン ベティ・ホワイト レッド・バトンズ ポール・ライザー

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