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シンプル・プラン

「シンプル・プラン」

「あの娘はいい子だったよ。1カ月過ぎても、道で会えば、あいさつしてくれた」。失業中の兄ジェイコブ(ビリー・ボブ・ソーントン)が車の中でしみじみと話す。金が入ったら結婚したいという兄に対して、弟のハンク(ビル・パクストン)は「貧乏でも兄さんを好きだった子がいたじゃないか」と反論するが、実はその娘は友人と、1カ月だけジェイコブとつきあう100ドルの賭けをしていたのだ、と兄は打ち明ける。それに続くのが上の言葉だ。原作の細部はもう忘れてしまったが、映画はこの兄ジェイコブの存在がとても大きくなっている。小さな夢を追いかけるドジな人生の失敗者、女っ気もまったくないどころか、キスさえしたことがないという役柄を「スリング・ブレイド」のビリー・ボブ・ソーントンが演じきっている。サム・ライミも緊張感漂う演出で、タイトな映画に仕上げた。

原作者で脚色も担当したスコット・スミス(アカデミー脚色賞ノミネート)はこう語っている。「子どもが小さな嘘をついてそれをごまかすためにまた嘘をつく。それがだんだん取り返しがつかなくなっていく。それがこのストーリーなんだ」。まさにそんなシンプルなストーリー。ただ、それにスコット・スミスは深い人間描写を取り入れていた。映画も基本的に原作に忠実な作りだが、一番の違いは、原作では途中で死んでしまうジェイコブが映画では最後の方まで生き、ハンクに究極の選択を迫ることだ。ラストシーンは原作同様なのだが、この場面を入れたことで、映画の余韻は原作以上に重いものになった。

映画全体としてもまじめな弟と駄目な兄の対照的な生き方に焦点を当てている。ハンクは幸せな結婚をして職にも就いているが、決して現状に満足しているわけではない。だから、いったん嘘をつくと、最後までそれを貫き通してしまう。ジェイコブはだれからも顧みられず、極めて不幸な境遇だが、最後には嘘をつき続けるのが耐えられなくなってくる。ビリー・ボブ・ソーントンはこの役に複雑な陰影を与えており、アカデミー助演男優賞にノミネートされるのも当然と思えてくる。

【データ】1998年アメリカ映画 2時間2分
監督:サム・ライミ 原作・脚色:スコット・スミス 製作:ゲーリー・レビンソン&マーク・ゴードン 音楽:ダニー・エルフマン
出演:ビル・パクストン ビリー・ボブ・ソーントン ブリジット・フォンダ ブレント・ブリスコー ベッキー・アン・ベイカー チェルシー・ロス

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