It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

サハラに舞う羽根

「サハラに舞う羽根」パンフレット

原作は1902年に刊行されたA・E・W・メイスンの冒険小説。過去に6度、映像化(テレビも含む)されているという。それを「エリザベス」のシェカール・カプール監督で映画化した。19世紀末のイギリスを舞台に、戦地へ赴く寸前に除隊して、友人3人と恋人から白い鳥の羽(臆病者の印)を送られた主人公が、その汚名を晴らすために奮闘する。スーダンに潜入し、砂漠でひげ面でボロボロになるあたり、リチャード・ハリス「荒野に生きる」やロバート・レッドフォード「大いなる勇者」のようである。死地から帰還する主人公を描く冒険小説のルーティンを踏んでいる描写であり、冒険小説の好きな人にならこういう描写は理解されるだろう。しかし、映画全体として見ると、主人公の行動に違和感がある。その違和感の根本にあるのは軍隊批判や反戦意識を持つ主人公なのに結局、戦地に行き、アフリカ人を殺すことになることだ。これではどうも首尾一貫しない。というか、汚名を晴らす方法が間違っているとしか思えない。

もちろん、カプール監督はイギリスの支配も経験したインド出身の人だから、そのあたりの気遣いは細部に感じられるのだが(アフリカ人を殺すのは友人を助けるためである)、イギリスの支配に対する「マフディーの反乱」を背景にした物語と主人公のこの設定では共感は得にくいだろう。一時は将軍の父親から勘当同然となった主人公にラスト近く、父親が「お帰り、ハリー」と呼びかける場面を入れてしまっては、政府や軍の在り方を肯定していることになる。カプール監督はパンフレットで「(過去の映画化作品を見て)怒りの気持ちが強くなりましたね。なぜなら、60年代に作られた最後の作品でもアフリカ人への蔑称が使われていたり、植民地支配を肯定的にとらえていたからです」と語っている。それならば、もう少し違う描き方があったはず。原作を離れることになっても、「僕は誰のためにでも戦争になど行きたくない」と言うセリフに沿ったキャラクター、物語にすべきではなかったのか。

見どころは中盤にあるCGを使わないスケールの大きいモブシーン。こういうシーンも久しぶりで、見応えのあるシーンに仕上がったのはセカンドユニットのアクション監督にヴィク・アームストロング(「アメリカン・ビューティー」のビデオマニアの青年だったウェス・ベントリー。ケイト・ハドソンは別にハドソンでなくても良いような役柄で、いくら、軍人になり、国のために死ぬことが栄誉とされた時代であっても、恋人に羽根を送るようなヒロインなんて最低である。

【データ】2002年 アメリカ 2時間12分 配給:アミューズピクチャーズ
監督:シェカール・カプール 製作総指揮:アロン・ライヒ ジュリー・ゴールドスタイン 製作:スタンリー・R・ジャッフェ マーティ・カッツ ポール・フェルドシャー 脚本:マイケル・シファー ホセイン・アミニ 原作:A・E・W・メイスン 撮影:ロバート・リチャードソン 音楽:ジェームズ・ホーナー プロダクション・デザイン:アラン・キャメロン 衣装:ルース・マイヤーズ

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