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トレーニング デイ

「トレーニング デイ」

ロス市警の新人警官イーサン・ホークが麻薬捜査課に移った最初の1日を描くサスペンス。上司のデンゼル・ワシントンから捜査現場の実地トレーニングを受けることになるが、思いも寄らない窮地に陥る。キャスティングが命の映画で、何も知らずに映画を見ると、後半の展開に意外性がある。ただし、その意外性が終わると、映画は結局、小悪人の自滅話のようになってしまう。イーサン・ホークかデンゼル・ワシントンかで、今ひとつ視点が定まらないのが残念。ラストはやはり主人公の手で終わらせるべきだったろう。脚本はロス市警で起きた“史上最悪の警察スキャンダル”をモデルにしたらしい。それならトレーニングという設定は必要なく、正面からこのテーマを取り上げた方が良かったのではないか。ストーリー・テリングとテーマがうまく噛み合っていない感じを受ける。要するに回りくどいのである。ロスのギャングの怖さや荒れた街の風景などはリアルに描かれており、ワシントンも相変わらず熱演しているが、同じロスが舞台でテーマ的にも似ている「L.A.コンフィデンシャル」に比べると、ちょっと物足りない。

麻薬捜査課に配属された新人警官ジェイク・ホイト(イーサン・ホーク)は初日に有能な捜査官アロンゾ・ハリス(デンゼル・ワシントン)に電話で呼び出される。カフェで待っていたアロンゾは署には行かず、街で実地に麻薬摘発をトレーニングする。車の中でアロンゾはジェイクに麻薬の吸引を強要。できなければ、麻薬捜査官にはなれないと脅す。言われるままに吸引したジェイクは朦朧とした意識の中で暴行現場を目撃。車を飛び出し、少女を救うが、アロンゾは犯人2人を逃がしてしまう。大物だけを狙うアロンゾにとって暴行犯は興味の対象外らしい。2人はアロンゾの情報屋ロジャー(スコット・グレン)の所へ向かう。そこでロジャーはアロンゾにロシア人が命を狙っていると告げる。アロンゾが先週殺したロシア人は大物だったらしい。それを逃れるには大金を用意する必要があった。アロンゾは麻薬密売人のボスの家で捜査に見せかけて金を盗み、さらにロジャーの金を狙う。金で逮捕状を出させたアロンゾは配下を集め、再びロジャーの家へ。ロジャーがこれまでに集めた大金を強奪しようとする。アロンゾはジェイクにロジャーを撃ち殺すよう命令するが…。

後半の意外性というのはつまりデンゼル・ワシントンの悪役のことで、これが分かって以降、映画は悪徳警官の末路と、秘密を知ったジェイクが陥る危機を描くことになる。ジェイクが3人のギャングの家へ置き去りにされる場面は怖いが、どうも本筋から離れた余計なサスペンスという気がしないでもない。アロンゾの最期については今時珍しいパターンだが、かつてはこういう話よくあった。アントニー・フュークワー(「リプレイスメント・キラー」「BAIT」=日本未公開)の演出は平均的。1日だけのドラマを追ったデヴィド・エアーの脚本の意欲は買うけれど、もう一工夫必要だったのだと思う。

【データ】2001年 アメリカ 2時間2分 配給:ワーナー・ブラザース
監督:アントニー・フュークワー 製作:ジェフリー・シルバー ブルース・バーマン 脚本:デヴィッド・エアー 撮影:マウロ・フィオーレ 音楽:マーク・マンチーナ 美術:ナオミ・ショーハン 衣装:ミケーレ・マイケル
出演:デンゼル・ワシントン イーサン・ホーク スコット・グレン トム・ベレンジャー クリフ・カーティス ドクター・ドレー スヌープ・ドッグ メイシー・グレイ

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