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チャーリーズ・エンジェル

「チャーリーズ・エンジェル」

1970年代にヒットしたテレビシリーズよりもアクションに比重が置いてある。主演のキャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューの3人ともカンフーばりばり。ディアスのアクションの決まり方には感心させられるほど。プロデュースも兼ねたバリモアの要望でエンジェルたちは拳銃を持たず素手で立ち向かうが、こんなに強ければ拳銃など不要である。香港から招かれたユエン・チョンヤンが武術指導し、1日6−8時間の練習に励んだ成果で、この映画の成功はひとえにこのアクション場面の切れ味にあると思う。これにディアス、バリモアのセクシーさ、エンジェルとチャーリーの仲介役ボスレー(ビル・マーレー)も絡んだユーモアが満載され、エンタテインメントとして申し分ない出来。監督デビューのマックジーの演出は前半ややモタモタしているけれど、ささいなことと目をつぶってしまえる。上等なところは狙わないが、とにかく1時間38分楽しませてくれる水平線上の傑作とでも言うべき作品。気分良く見られるのが何よりの利点で、シリーズ化を切に希望する。

コロンビア映画のトレードマークである自由の女神の背景にある雲から飛行機の場面に移り、大がかりな空中アクションが展開されるオープニングは快調な出足。エンジェルの3人をさらりと紹介する場面はテレビ調の演出だ(かつてのシリーズのメロディが流れるのがうれしい)。ナタリー(キャメロン・ディアス)、ディラン(ドリュー・バリモア)、アレックス(ルーシー・リュー)の美女3人は謎の富豪チャーリーの指令で動く探偵。今回の任務はノックス社の誘拐されたプログラマー、エリック・ノックス(サム・ロックウェル)を助け出すこと。ノックスが開発した音声追跡ソフトは指紋よりも正確な判定を下し、通信衛星を使って声の主が地上のどこにいても見つけだすことができる。ノックスはこのソフトとともにライバル社にさらわれたらしい。ノックス社の社長ビビアン(ケリー・リンチ)から依頼を受け、3人はライバル社の社長ロジャー・コーウィン(ティム・カリー)の周辺を捜査する。しかし、不気味な拳法の達人がそれを妨害。路地裏での対決が最初のアクションの見せ場となる。

それまでややぎこちない演出に眉をひそめていたのだが、ここで不満は解消された。ディアスのすらりと伸びた足から繰り出されるキックの破壊力、ワイヤーを使った空中戦、決めのポーズまで3人とも見事なアクションを披露する。3人はノックス救出に成功するが、その後一ひねりあり、エンジェルたちは危機にさらされることになる。クライマックスにはまたカンフー炸裂の場面が展開される。エンジェル3人のキャラクターはテレビシリーズのような才媛ではなく、コケティッシュな部分(特にキャメロン・ディアス)があり、チロルの衣装で敵の捜査をする場面などは爆笑もの。最初から最後までほとんど冗談半分のようなお気楽タッチである。セクシーな場面も上品に仕上がっているのに好感を持った。

劇中で登場人物の一人が「またテレビシリーズの映画化か」と揶揄する場面があるけれど、これはテレビシリーズの映画化作品の中では大いに成功した部類に入るだろう。「ミッション・インポッシブル」はテレビシリーズを破壊するベクトルを持っていたのに対して、この映画はテレビシリーズをはるかにパワーアップして見せる方向に振っている。マックジーの演出はビジュアルな場面をつないでいく方法で、まあ、あまり上等とは言えない。脚本も決して良くできているわけではないが、画面の充実度がそれを救っている。主演3人の魅力が弾けているのが勝因なのである。

【データ】2000年 アメリカ 1時間38分 コロンビア映画 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給
監督:マックジー 製作:レナード・ゴールドバーグ ドリュー・バリモア ナンシー・ジュボネン 製作総指揮:ベティ・トーマス ジェノ・トッピング ジョセフ・M・カラッチオーロ 武術指導:ユエン・チョンヤン 脚本:ライアン・ロウ エド・ソロモン ジョン・オーガスト 撮影:ラッセル・カーペンター 音楽:エドワード・シェームア 衣装デザイン:ジョセフ・G・オーリシ 美術:J・マイケル・リーバ
出演:キャメロン・ディアス ドリュー・バリモア ルーシー・リュウ ビル・マーレー サム・ロックウェル ケリー・リンチ ティム・カリー クリスピン・グローバー マット・ルブラン LL・クール・J トム・グリーン ルーク・ウィルソン ショーン・ウォーレン ジョン・フォーサイス

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