It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ターミネーター2

単純なストーリーを力強い映像で押しまくるキャメロン・タッチを堪能した。評判の高いSFXはもちろん、アクション場面にも例を見ないほどの迫力とスピード感がこもっている。キャメロンのスペクタクルに徹した映画作りが成功した一例だ。ストーリーを極秘にしたという割りには、意外な展開はまったくなく、見終わった時の印象は「まあまあの映画」ということになるのだが、この映像、一見の価値はある。いや、必ず見ておいた方がいい映像だ。

前作から10年後の1994年、ロサンゼルス。未来社会を支配するコンピューター・スカイネットが再び、タイムマシンで新型ターミネ一夕ーを送り込んでくる。今回の標的はサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)ではなく、未来の指導者となる少年ジョン・コナー。それを阻止するために人間側もプログラムし直したターミネ一夕ーを送る。ここからT1000型とサイバーダイン101型という新旧2台のターミネ一夕ーの対決が展開されることに なる。第1作よりさらに強い敵を登場させるという続編の王道をいくプロットだが、「エイリアン2」で続編の作り方を心得ているキャメロンには、「ロボコップ2」のような惨めな失敗はあり得なかった。「エイリアン2」の強力なエイリアン・クイーンのように、T1000型は凄まじい能力を持っている。まるで液体のように何にでも変形する体は、穴がボコっと開いても簡単に修復してしまう。材質そのものが意志を持っているかのように不死身なのだ。この変形シーンはコンピューター・グラフィックスで処理されたらしいが、驚嘆すべき技術である。「アビス」で宇宙人が操る海水を表現した時の技術がさらに進歩して、見たこともない映像が繰り広げられる。SFXを担当したスタン・ウィンストンのアカデミー視覚効果賞は決まりだろう。

冒頭の未来社会のイメージもチャチだった前作とは比べものにならない。製作費に1億ドルもかけただけあって、スケールは随分大きくなった。アクション・シーンも冴え渡っており、オートバイで逃げるジョンを大型トラックに乗ったT1000型が執拗に追い掛けるシーンは、キャメロンらしい粘りに満ち、緊迫感に溢れる。ただ、前作で俳優としてのキャラクターを決定づけたアーノルド・シュワルツェネッガーは今回、善玉でオールドタイプ。冷酷無比な機械が人間らしさを学ぶという、ありふれた損な役回りと言えよう。しかもジョンから人間を殺さないよう命令され、手足を縛られたも同然。T1000型より目立たないのは仕方がない。

惜しいのはあまりにも単純なストーリーである。ジョンとサラは1997年に起こる核戦争を回避するため、スカイネットの開発計画を阻止しようとする。スカイネットの基になったマイクロチップを破棄するわけである。これに絡んでもうひと捻りすれば、前作以上にセンス・オブ・ワンダーを備えた凄い傑作になっていただろう。しかし、キャメロンは承知のうえで見せる映画に徹したのだと思う。

機械に支配された未来社会という前作の設定を見て、僕は「銀河鉄道999」の影響を受けているに違いないと思ったが、その後の展開は独自のものになった。さらに続きを撮るのはもう無理だろうが、どうせなら未来社会を描いた番外編でも作ってほしい。それは「エイリアン2」のようなSFバトル・アクションの傑作になるはずだ。(1991年10月号)

【データ】1991年 アメリカ 2時間17分
監督:ジェームズ・キャメロン 製作総指揮:ゲイル・アン・ハード 製作:B・J・ラック ステファニー・オースティン ジェームズ・キャメロン 脚本:ジェームズ・キャメロン ウィリアム・ウィッシャー 撮影:アダム・グリーンバーグ 音楽:ブラッド・フィーデル
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー リンダ・ハミルトン エドワード・ファーロング ロバート・パトリック

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