It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

SPY_N

「SPY_N」チラシ

ただただ地上172メートル、ビルの44階に吊られたガラスの上での藤原紀香のアクションシーンを見るためだけの映画で、それ以外にはあまり見るべき部分もない。しかもそこまで延々と待たされる。ボンデージスーツに身を固めた藤原紀香のそこまでのアクションは、まあフツーの出来なのだが、美形とスタイルの良さから繰り出すアクションは魅力的で、「チャーリーズ・エンジェル」みたいな作品に出るといいと思う。撮り方が下手、演出が下手、脚本もデタラメな映画で、ほとんど退屈だが、藤原紀香からアクションを引き出したことだけは功績と言える。

中国・上海が舞台。上海の裏社会を牛耳るMr.マーの部下が、ファッションショーの会場で、ボーイを装った何者かに殺される。騒然とする中、Mr.マーと取引するため、日本から来ていたNORIKA(藤原紀香)は倒れた部下の胸元からフロッピーを抜き取り、会場を立ち去る。会場に居合わせていた上海警察のグレン(アーロン・クォック)は殺人犯を、コンビを組むアレックス(ワン・リーホン)はNORIKAを追う。しかし、ダレンは激しいバトルを繰り広げたにもかかわらず犯人を取り逃がし、アレックスもNORIKAに逃げられてしまう。

映画はマーク・ダカスコスやアーロン・クオック、クーリオら各国のスターがそろい、アクション場面も満載なのだが、冒頭からキレが悪すぎる。画面に締まりがなく、話が行き当たりばったり。ランボルギーニとF3のカーチェイスとか、面白くなりそうなのに、今ひとつ盛り上がりに欠けるのは、演出力のなさが原因だろう。いろいろなアクションがあるが、このカーチェイス以外に独自性のあるもの、目新しいものは見当たらない。マーク・ダカスコスも「ジェヴォーダンの獣」に比べると、魅力が半減している(製作は「ジェヴォーダンの獣」の方がこの映画より後になる)。

監督のスタンリー・トンは「ポリス・ストーリー3」や「ファイナルプロジェクト」「レッド・ブロンクス」でジャッキー・チェンと組んで、ジャッキーのアメリカ進出に貢献した。ジャッキーの場合は演出にもかかわるから、これらの作品がまずまずのできだったのではと思えるほど、今回は見る影もない。ジャッキーとアーロン・クオックという主演スターの格の違いが大きいにしても、これだけの俳優を集め、アクションを詰め込んで、これぐらいの出来にしかならないようでは監督としての才能はないのだろう。藤原紀香はアクション場面は及第点でも、普通の演技に少し難がある。特に前半の美人であることを鼻にかけるような演技は修正をして、アクション映画の主演を目指して欲しいものだ。

【データ】2000年 アメリカ=香港 1時間31分 配給:GAGA=HUMAX
監督:スタンリー・トン 製作:スタンリー・トン バービー・タン アンドレ・モーガン 撮影: ジェフリー・C・ミガット 脚本:スタンリー・トン スティーブン・ホイットニー 音楽:ネイザン・ウォン
出演:アーロン・クオック 藤原紀香 マーク・ダカスコス クーリオ ワン・リー・ホン ルビー・リン ラウ・シュミン ロウ・ホイカン ポール・チャン 

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