It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

永遠のこどもたち

端正なゴシックホラー。アレハンドロ・アメナーバル「アザーズ」との比較をよく見かけるが、いなくなった子供を捜し回る母親という設定から「ポルターガイスト」、古い屋敷を調査するサイキック(霊媒)が出てくる点で「ヘルハウス」、袋をかぶった子供を見て「エレファント・マン」、古い8ミリの映像から「リング」を連想した。そうした諸々の過去の映画を連想してしまうのは映画の内容自体には新しい部分があまり見あたらないため。「アザーズ」は話に大きな仕掛けがあったが、この映画はオーソドックスそのものなのだ。もう少し新しさも欲しいところだが、母の愛を中心に組み立てた脚本は悪くないと思う。これが監督デビューのフアン・アントニオ・バヨナ(Juan Antonio Bayona)は手堅い演出を見せ、ホラーであるにもかかわらず、映画を悲劇に終わらせず、穏やかで幸福感あふれるラストに着地してみせる。「キャリー」風の人を脅かすような演出もあるのだけれど、基本はじっくりと怖い空気を醸成しているのが好ましい。

ラウラ(ベレン・ルエダ)は夫のカルロス(フェルナンド・カヨ)、息子のシモン(ロジェ・プリンセプ)とともに海辺の屋敷に引っ越してくる。この屋敷はラウラが育った孤児院だった。ここに障害を持つ子供たちのためのホームを造ろうと、ラウラは計画していた。シモンには空想癖があり、屋敷の中や海岸の洞窟で見えない子供としゃべっている。入所希望者を集めたパーティーの日、ラウラに叱責されたシモンは姿を消す。屋敷には以前からポルターガイスト現象が起きており、霊媒(ジェラルディン・チャップリン)の調査で、孤児院だったころ、子供たちに悲惨な事件があったことが分かる。シモンの失踪はその子供たちの霊と関係しているらしい。

登場する死者の霊に悪意はない。これが直接的な描写ばかりのホラーが蔓延するアメリカ映画なら、相当に恐ろしい存在として描いたことだろう。過去の2つの事件のうちの1つを発展させれば、これは「リング」の貞子のような恨みのかたまりの化け物を設定することも可能だった。それをやらず、話を母の愛にまとめた脚本(セルジオ・G・サンチェス)は賢明だったと思う。シモンが生者と死者の境界を乗り越えられるのは難病にかかっていたからという説明にも違和感はない。

「ポルターガイスト」のジョベス・ウィリアムズが魅力的であったように、この映画のベレン・ルエダも1人で映画を背負っている。アメナーバルの「海を飛ぶ夢」で女優デビューし、これが初主演作。1965年生まれで、40歳を過ぎてからの初主演は遅いが、今後も出演作を見たい。

TOP