It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

アメリカン・スウィートハート

「アメリカン・スウィートハート」パンフレット

ビリー・クリスタル脚本・製作のシチュエーション・コメディ。美人でスターの姉とは対照的に地味なマネージャーの妹(ジュリア・ロバーツ)が、姉と別居中の夫(ジョン・キューザック)に恋をして、という話かと思ったら、新作映画のマスコミ試写をめぐる話がトップに来る。その企画を頼まれたのが一時は会社を解雇された宣伝マンのビリー・クリスタル。というわけで映画は2つの話を交差させつつというか、あまり噛み合いもせずに進行していく。素直にロマンティック・コメディに仕上げれば良かったのに、クリスタルが出しゃばりすぎで、本筋とはあまり関係ない笑いを入れてくるのが余計。犬が絡んだシーンなど映画の品を損なうだけである。製作を兼ねるなら、もう少し謙虚な姿勢が欲しいところだ。

共演映画が次々にヒットして実生活でも結婚し、アメリカの理想のカップル(America's Sweethearts)といわれるグウェン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とエディ(ジョン・キューザック)。しかし、グウェンの浮気を知ったエディは逆上して浮気の現場を襲い、2人は別居。エディはノイローゼ気味で入院している。共演しなくなってグウェンの人気にも陰りが見え始めた。そんな時、1年前に撮影した2人の共演映画が完成。伝説的な監督で変人のハル・ワイドマン(クリストファー・ウォーケン)はプロデューサーにも見せず、マスコミ試写で公開すると譲らない。本当に完成したのかどうかも怪しい。やり手宣伝マンのリー(ビリー・クリスタル)は砂漠の中のホテルで試写会を企画。グウェンとエディを試写会に連れ出し、話題作りで映画のヒットを狙う。というのが長い前ふり。ここからグウェンの妹でマネージャーのキキ(ジュリア・ロバーツ)の話が始まるのだが、余計なエピソードが多くて、どうも要領が良くない。

クリスタルの下ネタを入れた脚本はあまり上等とは言えず、ジョー・ロスの演出もタイトさを欠く。ほとんどテレビドラマのレベルなのだが、ゼタ=ジョーンズとロバーツが出ているので眺めている分には退屈はしないといったところ。実際には2歳年上のロバーツが妹役というのはちょっと無理がある。だいたい役の上で33歳(実際には今年35歳)になって、けなげで純粋な役というのはどうか。太っていた頃(メーキャップが見物である)は男に見向きもされず、痩せて美しくなったら恋が実るというシンデレラ的安易な発想が基本にあるのでは、これぐらいの出来にしかならないのは自明だろう。

ゼタ=ジョーンズは明らかにロバーツよりは美人だが、キツイ顔つきはやや意地の悪い役柄にぴったり。現実を反映したものか、と思えてくる。ウォーケンはすごいメーキャップでパンフのキャストを見るまで分からなかった。ジョン・キューザックは情けないシーンが用意されており、キャリアのプラスにはならない出来。ゼタ=ジョーンズやロバーツに愛されるほど魅力のある男にはとても見えないのも難点か。

【データ】2001年 アメリカ 1時間43分 配給:東宝東和
監督:ジョー・ロス 製作:ビリー・クリスタル スーザン・アーノルド ドナ・アーコフ・ロス 脚本:ビリー・クリスタル ピーター・トラン 撮影:フェドン・パパマイケル プロダクション・デザイン:ガレス・ストーバー 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード 音楽監修:キャシー・ネルソン 衣装デザイン:エレン・ミロジニック ジェフリー・カーランド
出演:ジュリア・ロバーツ キャサリン・ゼタ=ジョーンズ ジョン・キューザック ビリー・クリスタル ハンク・アザリア スタンリー・テュッチ クリストファー・ウォーケン アラン・アーキン セス・グリーン ラリー・キング

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