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オーシャンズ11

「オーシャンズ11」パンフレットの表紙

「オーシャンと11人の仲間」(1960年、ルイス・マイルストン監督)をスティーブン・ソダーバーグ監督がリメイク。ラスベガスのカジノの売上金1億6000万ドルを刑務所から出所したばかりのダニエル・オーシャン(ジョージ・クルーニー)と11人の仲間が盗もうとする。ソダーバーグの前作「トラフィック」とは全く異なる軽い仕上がりのエンタテインメントだ。ホテル王ベネディクト(アンディ・ガルシア)を騙すコンゲーム的要素があるので、脚本は観客にも罠を仕掛けてくるが、これも軽い仕掛け。盗みの作戦自体は「スパイ大作戦」を思わせるものである。盗みだけではドラマティックにならないので、オーシャンと別れた妻(ジュリア・ロバーツ)との関係を味付けにしているのがポイントで、これがなかなか効果的。メンバーを紹介する序盤は単調でやや退屈だけれど、盗みの作戦が始まる中盤から面白く、長い描写を持たせる工夫を懲らしている。ソダーバーグはソフィスティケートな映画を目指したという。その意図は成功しており、コメディタッチの水準作というところか。

ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)は窃盗で4年の刑期を終えた後、すぐに次の盗みを計画する。ラスベガスの豪華ホテルの地下にある金庫から3大カジノの売上金1億6000万ドルを強奪する計画。オーシャンは仲間でいかさまトランプ師のラスティー(ブラッド・ピット)とともに人材を集め始める。スリのライナス(マット・デイモン)、爆破の達人バシャー(ドン・チードル)、引退した元詐欺師ソール(カール・ライナー)など一癖もふたクセもある連中がそろった。ホテルのオーナーのベネディクトはオーシャンの元妻テス(ジュリア・ロバーツ)と付き合っている。ホテル偵察中にそれを知ったラスティーは「仕事に私情を持ち込んだ」としてオーシャンを計画から外す。しかも決行の日、オーシャンは警戒するベネディクトから監禁され、仲間だけで計画は実行されることになる。

ソダーバーグは多くの登場人物をてきぱきと描き分けている。ただし、あまりエモーションが続かない。テッド・グリフィンの脚本は前半、オーシャンの真意を伏せており、単なる盗みの計画が進行しているとしか思えないからだ(その意味でこれはハードボイルドの手法を意識した脚本だと思う)。ラスティーの主張とは逆に、こういう映画は主人公の私情が強く入らないと面白くはならない。元妻とベネディクトの関係が描かれてから面白くなるのだが、敵役のベネディクトについてはもう少し憎々しく描く必要があった。元妻をベネディクトから取り返したいというオーシャンの動機は納得できるのだが、これにもう一つ何か(以前からの因縁とか)をプラスすると良かったと思う。冷酷非情な男に一撃を与えるカタルシスが不足しているので、見ていてオーシャンたちの活躍に喝采を叫ぶほどの共感は持てない。

ジョージ・クルーニーはおしゃれなオーシャンにはぴったりの配役。マット・デイモンやブラッド・ピットも相変わらずうまいし、ロブ・ライナー監督の父カール・ライナーは監督業よりも俳優としての方が適しているのではないかと思う。オーシャンたちに協力する元ホテル経営者役でエリオット・グールドが出演しているが、相当老け込んでおり、体型も変わり、一目ではだれだか分からなかった。音楽の選曲は良く、控えめな使い方にも好感が持てる。

【データ】2001年 アメリカ 1時間57分 配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:スティーブン・ソダーバーグ 製作総指揮:ジョン・ハーディー スーザン・イーキーズ ブルース・バーマン 脚本:テッド・グリフィン 撮影:ピーター・アンドリュース(スティーブン・ソダーバーグ) 音楽:デヴィッド・ホルムズ 美術:フィリップ・メシーナ 衣装:ジェフリー・クアランド
出演:ジョージ・クルーニー マット・デイモン アンディ・ガルシア ブラッド・ピット ジュリア・ロバーツ ケイシー・アフレック スコット・カーン ドン・チードル エリオット・グールド カール・ライナー バーニー・マック エディー・ジェイミソン シャオボー・クイン レノックス・ルイス ウラジミール・クリシュコ

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