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シネマ1987online

エボリューション

「エボリューション」

アイバン・ライトマン監督が「ゴーストバスターズ」(1984年)のノリで作ったエイリアン撃退コメディ。「ゴーストバスターズ」よりも弱いのは出演者にアクの強さがないからか。主演のデヴィッド・ドゥカブニーは基本的にコメディができていないし、転んでばかりいるジュリアン・ムーアはまだしも、短大の地質学講師オーランド・ジョーンズと消防士志望のショーン・ウィリアム・スコットにもう少し存在感がほしいところ。B級コメディアンのドラマを見ているようで、ビル・マーレー、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス、リック・モラニスと強烈なキャラクターがそろっていた「ゴーストバスターズ」に比べると、見劣りがする(といっても、「ゴーストバスターズ」がそんなに面白かったわけでもない)。ライトマンは近年、「デーヴ」などウェルメイドなコメディを作り、ある程度の評価を得ていたが、再びハチャメチャなSFコメディに戻ってきた今回はどうも演出的に緩い。お気楽な映画だから、お気楽に演出したのかもしれない。

アリゾナ州の地方都市グレン・キャニオンに隕石が落下する。近くの短大で生物学を教えるアイラ・ケイン(デヴィッド・ドゥカブニー)と地質学を教えるハリー・ブロック(オーランド・ジョーンズ)は隕石によってできた洞窟へ調査に行き、隕石から出てきた液体を採種。それは10種類のDNAを含み、急速に進化する生物だった。数日後、2人が学生を連れて再び調査に行くと、洞窟にはナメクジのような軟体動物がびっしり。その生物、空気中では窒息死してしまう。国防省は秘かにケインのコンピューターをハックし、生物の存在を知る。ケインは以前、国防省に勤務しており、開発したワクチンを軍に接種、強烈な副作用(ケイン熱)を起こしたため解雇された過去がある。それ以来、国防省はケインを要注意人物として監視していたのだった。洞窟は軍が管理し、アリソン・リード博士(ジュリアン・ムーア)以下のスタッフが調査。ケインの研究も横取りされる。そのころ街には不思議な生物が出現する事件が相次いでいた。どうやら隕石から出てきた生物が増殖し、地下に張り巡らされた洞窟を伝って出現しているらしい。アイラとハリー、アリソンに消防士志望で隕石落下の現場に居合わせたウェイン(ショーン・ウィリアム・スコット)を加えた4人はエイリアン撃退に乗り出す。

さまざまな宇宙生物を見せるSFXはフィル・ティペットが担当。小さな軟体動物から徐々に進化し、クモやワニや犬をモチーフにしたちょっとグロテスクでユーモラスな生物を作り出している。白眉はショッピング・センターを飛び回る(ラドンやプテラノドンを思わせる)翼手竜のような生物で、いや、これをもっと見たかった。ただし、この生物、翼があるのに手もあるという不思議な造型。ということはドラゴンか。クライマックスに登場するアメーバのようなというか単細胞のような巨大生物にはアイデアが足りないと思う。しかも下品。登場人物が○○まみれになるのは、これまたマシュマロマンの泡をかぶった「ゴーストバスターズ」のラストと同じ趣向だけれど、今回は汚い。いくら前半に伏線があるとはいってもちょっと、これを見た後、食事をする気にはなれない。

【データ】2001年 アメリカ 1時間41分 配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
監督:アイバン・ライトマン 製作総指揮:トム・ポラック ジェッフ・アップル デヴィッド・ロジャース ストーリー:ドン・ジャコビー 脚本:ドン・ジャコビー デヴィッド・ダイアモンド デヴィッド・ウェイスマン 撮影:マイケル・チャップマン 美術:J・マイケル・リーヴァ 衣装:アギー・ゲラート・ロジャース 視覚効果スーパーバイザー:フィル・ティペット
出演:デヴィッド・ドゥカブニー ジュリアン・ムーア オルランド・ジョーンズ ショーン・ウィリアム・スコット テッド・レバイン ダン・エイクロイド イーサン・スプリー マイケル・レイ・バウアー パット・キルベイン タイ・バレル キャサリン・タウン

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