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シネマ1987online

恋は邪魔者

「恋は邪魔者」パンフレット

「ムーラン・ルージュ」のユアン・マクレガーが共演したロマンティック・コメディ。1962年のニューヨークを舞台に「恋は邪魔者」(Down with Love)という本を出版した作家と、雑誌記者のプレイボーイの恋の駆け引きを描く。ファッションやインテリアはいかにも60年代風にのポップでカラフルにまとめられて面白く、いつものようにキュートなゼルウィガーの演技を見ているだけでも楽しめる。終盤の展開にはちょっと感心。ちゃんと脚本を練っていることに好感が持てる(いったん話をひっくり返した後の展開はあまりうまくはないなと思ったら、そこも仕掛けがあった)。「チアーズ!」に続いて監督2作目のペイトン・リードは軽くリズミカルな演出を心掛けたようで、1時間41分の上映時間を飽きさせない。人工的に作り上げられた空間には少し窮屈さがあるし、本当の60年代のロマンティック・コメディはもっと面白かったような気がするが、少しも深刻ぶらないところにセンスの良さを感じる。

「恋は邪魔者」というノンフィクションを書いた作家のバーバラ・ノヴァク(レニー・ゼルウィガー)はPRのため、男性誌「ノウ」の記者キャッチャー・ブロック(ユアン・マクレガー)の取材を受けようとするが、プレイボーイのキャッチャーはスチュワーデスとのデートに忙しく、3回続けてバーバラとの約束をすっぽかす。腹を立てたノヴァクはもう絶対会わないとタンカを切るが、それでは本は売れない。ところが、テレビのエド・サリバンショーで紹介され、ジュディ・ガーランドが同名の歌を歌ったことから本はたちまちベストセラー。バーバラは一躍有名人の仲間入りを果たす。おまけにキャッチャーをテレビで「最低の男」と批判。ガールフレンドたちからも嫌われたキャッチャーはバーバラのスキャンダルを暴露しようと、真面目な宇宙飛行士ジップと名乗って、バーバラに接近し、得意の手腕でバーバラを恋に落とす。ついにバーバラにベッドインを約束させるが…。

この2人の恋模様と並行して編集者のヴィッキー(サラ・ポールソン)とノウ誌のオーナーでキャッチャーの親友デヴィッド(ピーター・マクナマス)のおかしな恋が描かれる。どちらにも共通するのはウーマンリブの先取りをしたような描写であること。バーバラの本がベストセラーになったのは職場で冷遇され、男より低い地位にある女性たちを目覚めさせてしまったからで、出版社の重役たちが自分の愛人に逃げられたと渋い顔をするのが笑わせる。1962年と言えば、ケネディは暗殺されていず、ベトナム戦争の深刻な影もなかった時代。そんな時代を感じさせるおおらかなタッチが好ましく、全編に流れる60年代風の音楽(マーク・シェイマン)もいい。

ゼルウィガーは「ブリジット…」のイメージがあるので太っているのかと思うが、この映画ではスマート。もっとも「ブリジット…」の続編のためにまたまた10キロほど太っているらしい。クレジットにユアン・マクレガーとのデュエットが流れる。「ムーラン・ルージュ」の時にも思ったが、マクレガーは声が良くて歌がうまい。低い声のゼルウィガーよりよほどうまく、またミュージカルに出ればいいのになと思う。

【データ】2003年 アメリカ 1時間41分 配給:20世紀フォックス
監督:ペイトン・リード 製作:ブルース・コーエン ダン・ジンクス 製作総指揮:パディ・カレン アーノン・ミルチャン 脚本:イブ・アラート デニス・ドレイク 撮影:ジェフ・クローネンウェス プロダクション・デザイン:アンドリュー・ロウズ 衣装デザイン:ダニエル・オーランディ 音楽:マーク・シェイマン
出演:レニー・ゼルウィガー ユアン・マクレガー デヴィッド・ハイド・ピアース サラ・ポールソン トニー・ランドール レイチェル・ドラッチ ジャック・プロトニック ジェリー・ライアン

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