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シネマ1987online

ファインディング・ニモ

「ファインディング・ニモ」パンフレット

「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」「モンスターズ・インク」でおなじみのピクサーの3DCGアニメ。本編が始まる前に「 Knick Knack 」という短編が流れる。スノウボールの中の雪だるまがなんとか外に出ようとする話。他愛ないが面白い。

本編の方はオーストラリアのグレートバリアリーフに住む魚のカクレクマノミのマーリンが主人公。おもちゃ、アリ、お化けと来て今回は海の中の魚たちの様子がCGで表現される。CGの技術は1作ごとに進歩しているようで、水の表現やスピーディーな魚たちの動きに感心させられる。しかし、ピクサーアニメの良さはストーリーとキャラクターの造型に凝っていることだ。ニモの生まれつきの障害(胸びれが少し小さい)やマーリンの臆病さ(慎重さ)をはじめ、他の魚たちもそれぞれに深いキャラクターばかりである。話の展開にも少しも無理がない。普通なら不可能に思える水槽に入れられたニモをどう助けるかが見どころになるが、その救出(脱出)方法もなるほどよく考えてある。笑って笑って手に汗握って、最後は親子の絆にホロリとさせる上質のファミリー映画と思う。

マーリンは400個の卵が間もなくふ化するという時、凶暴なバラクーダに襲われ、卵1個を残して愛する妻も失ってしまう。残った卵に妻が提案していたニモと名付け、マーリンは「絶対にこの子を守ってみせる」と誓う、というオープニングからうまい。マーリンがその反動で過保護な父親になるというのが納得できる展開なのである。ニモは成長し、小学校に行くことになるが、付いてきた心配性の父親への反発もあって、船に近づき、人間にさらわれてしまう。船が落とした水中眼鏡にあった住所を手がかりにマーリンはニモの行方を探し求める。それを助けるのがナンヨウハギのドリー。物忘れが激しいのが難点だが、ドリーは人間の文字を読めて、気のいい女。サメに襲われたり、深海魚の攻撃をかわしたりしながらマーリンとドリーは旅を続ける。

マーリンは旅の苦難を通じて、過度の心配性を克服していく。一方、ニモが入れられた水槽の中では他の魚たちと一緒に脱出計画が展開され、体の小さなニモが活躍する。これにタイムリミットを設定しているのは「トイ・ストーリー」などと同様の趣向で、早く脱出しないと、乱暴な子供ダーラにもらわれてしまうのである(ダーラは魚の入った袋を振り回して魚を殺してしまう常習犯だ)。細かいギャグを散りばめながら、本筋が真っ当に作ってあるので映画の完成度も高くなるわけだ。

僕が見たのは日本語吹き替え版。ウィレム・デフォーやジェフリー・ラッシュもいる英語版の声優も豪華だが、日本語版ではマーリンを木梨憲武、ドリーを室井滋が担当している。特に室井滋が絶妙のうまさ。あわてん坊で早口のドリーにぴったりな感じだった。

【データ】2003年 アメリカ 1時間41分
監督・原案・脚本:アンドリュー・スタントン 共同監督:リー・アンクリッチ 製作:グラハム・ウォルターズ 製作総指揮:ジョン・ラセター 脚本:ボブ・ピーターソン デイヴィッド・レイノルズ 音楽:トーマス・ニューマン
声の出演(カッコ内は日本語吹き替え版):アルバート・ブルックス(木梨憲武) エレン・デジュネレス(室井滋) アレクサンダー・グールト(宮谷恵多) ウィレム・デフォー(山路和弘) オースチン・ペンデルトン(津田寛治) ジェフリー・ラッシュ(後藤哲夫) アンドリュー・スタントン(小山力也)

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