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シネマ1987online

ロボコン

「ロボコン」パンフレット

高専のロボットコンテストをテーマにした理数系の青春映画。「ウォーターボーイズ」などのスポ根映画のように落ちこぼれチームが勝っていく物語を古厩智之監督は淡々と端正に演出し、好感の持てる作品に仕上げた。クライマックスの全国大会は長回しで撮影しており、本当の大会のように思える出来。そこまでの物語を必要以上にドラマティックにせず、大会の場面で一気に盛り上げる演出はうまい。この大会の描写は出場するロボットのバラエティと試合内容の多彩さで面白い(手も足も出ないと思われた相手チームの「八の字積み」を攻略する手法に感心した)。しかし、一番の魅力は映画初主演の長澤まさみ。これまでの出演作(「クロスファイア」「なごり雪」「黄泉がえり」)ではほとんど印象がなかったが、この映画では何事にもやる気のなかった女の子が一転して競技に燃える姿を素直にさわやかに好演しており、これでブレイクしそうな感じがある。

映画で描かれるロボットコンテストは3つの台にラジコン操作のロボットで段ボールの箱を積む。2つの台を取れば勝ちだが、上に積み上げられると、相手の得点になる。これは昨年(2002年)の大会で実際に課題となった競技(「プロジェクトBOX」と言うらしい。NHKが絡んでいるからか?)。映画にも昨年の大会に出たロボットがいろいろ出てくる。

主人公の葉沢里美(長澤まさみ)は山口の徳山高専の生徒。冒頭、保健室でぼけーっとベッドに横たわっている姿は、高専生活で何も目的がないことを象徴している。里見はロボット作りの課題でも手抜きをして担任教師(鈴木一真)から1カ月の居残り授業かロボット部への入部かを迫られる。入部させられたのは第2ロボット部。部員の多い第1ロボット部と違って、部員は部長の四谷(伊藤淳史)と設計担当の航一(小栗旬)、組み立て担当でほとんど幽霊部員の竹内(塚本高史)の3人だけである。練習試合では第1ロボット部にあえなく敗れ、馬鹿にされる始末。中国地区大会でも初戦敗退するが、ロボットのユニークさを評価されて全国大会に出場することになる。4人は旅館で働きながら合宿してロボットを改良。里美は俄然やる気を出し、他の3人も大会に向けて一丸となる。

部員たちのキャラクターを徐々に鮮明にしていく演出は確かなもので、やる気がなかったり、内気だったり、いい加減だったり、ニヒルだったりしていた生徒たちが、競技を通じて変化していく姿を自然に見せる。4人の好演と相俟って、気持ちのいい展開である。特に木訥な感じをうまく表現した伊藤淳史に感心した。長澤まさみは笑顔が良く、合宿に行く途中のトラックの荷台で「夢先案内人」を歌うシーンや、4人でラーメンをすすりながら「ずっときょうが続けばいいのにね」とポツリと言うシーンなど良い感じである(そこを特に強調しない演出もいい)。役者ではこのほか、「ピンポン」でも独特のセリフ回しで笑わせた荒川良々(よしよし)が第1ロボット部の部長の役でまたまたおかしい。

生徒たちをデフォルメしてカラリとしたコメディに徹した「ウォーターボーイズ」も僕は好きだが、古厩監督の淡々とした演出も悪くない。ただ、淡々とした分、メリハリに欠ける面はあるし、1時間58分の上映時間も少し長い気がする。1時間40分程度にまとめると、もっと締まったのではないかと思う。

【データ】2003年 1時間58分 配給:東宝
監督:古厩智之 製作:富山省吾 製作統括:植田文郎 古川一博 小松賢志 チーフプロデューサー:鈴木律子 製作協力:NHKエンタープライズ21 音楽:パシフィック231 エンディングテーマ:Wack Wack Rhythm Band+こずえ鈴「Saturday Night」 撮影:清久素延 美術:金勝浩一
出演:長澤まさみ 小栗旬 伊藤淳史 塚本高史 うじきつよし 荒川良々 平泉成 吉田日出子 須藤理彩 鈴木一真

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